Akira Kosemura

Polaroid Piano (15th Anniversary Edition)

通常価格 $34.00

ローレンス・イングリッシュからの寄稿文

 小瀬村晶の『Polaroid Piano』は、私にとって非常に思い入れの深いアルバムです。Room40の姉妹レーベルの一つである「Someone Good」を設立する大きな原動力となったのは、晶の作品でした。

 『Polaroid Piano』は、後に「フェルト・ピアノ」として知られるようになる音楽スタイルの先駆けとなった作品であり、その手法はその後何年にもわたり、数多くのアーティストたちに受け継がれていくことになります。本作は、至近距離で捉えられたピアノの響きを、本質的かつ親密な形で描き出していますが、それだけにとどまりません。ピアノが、それを取り巻く空間の中で呼吸することを許容しているのです。

アルバムの構成としては、ピアノを中心としたヴィネット(小品)の集積となっています。それぞれの楽曲は、生活の気配を纏った音楽の「小宇宙」のようであり、それらは多孔質で外に向かって開かれ、時間の感覚や「いま、この瞬間」という空気が音楽の中へと染み込んでくるのを誘(いざな)っています。これらの楽曲は瞬時に親密さと哀愁を感じさせ、そのメロディには周囲の世界が刻印されています。ある録音では、スタジオの音響空間の外側からサイレンの音が響き、また別の曲では鳥の声が入り込み、晶の衣擦れの音までもが音楽そのものの中に溶け込んでいます。

この録音について最初に話し合った際、晶は私に、作曲の出発点となるような音を提供してほしいと提案してくれました。私は一連のフィールドレコーディングを収集し、シンプルで示唆に富んだヒントとして、また、晶が録音していた場所の軌道上に同時に存在するかもしれない「別の」環境を想像する手段として提供しました。それらのフィールドレコーディングのいくつかは、遠い記憶が語り直されるかのように、アルバムの中に収められています。

『Polaroid Piano』が稀有な作品である理由は多々あります。その一つは、アルバムの名の由来となった写真(ポラロイド)の「瞬間性」という特質を、音による書き写しとして見事に具現化している点です。各楽曲は聴覚的なスナップショットであり、ポラロイドというフォーマットの美学と密接に結びついた、ある種の「調和のとれた光」や「音色の露出」の質感を反映しています。

本作は、音源としての楽器の身体性を讃えるレコードです。そして、音楽をこれほどまでに深遠で、喜びに満ちたものにしてくれる「共鳴」や「音の生命力」のすぐ傍へと、私たちを招き入れてくれるのです。

Guitar – Muneki Takasaka (tracks: 2, 5, 9, 10)
Mastered By – Lawrence English at Negative Space
Mixed By – Akira Kosemura
Photography – Yuma Saito
Field Recordings – Lawrence English (tracks: 5, 9, 10)

1985年6月6日東京生まれ。在学中の2007年にソロ・アルバム「It’s On Everything」を豪レーベルより発表後、自身のレーベル「Schole Records」を設立。以降、ソロアルバムをコンスタントに発表しながら、映画やテレビドラマ、ゲーム、舞台、CM音楽の分野で活躍。
主なスコア作品に、瀬々敬久監督による長編映画「ラーゲリより愛を込めて」、河瀨直美監督による長編映画「朝が来る」(カンヌ国際映画祭公式作品【CANNES 2020】選出)、ハリウッドで制作された海外ドラマ「Love Is__」、石田スイ全面プロデュースによるNintendo Switch 用ゲームソフト「ジャックジャンヌ」、TBS系テレビドラマ「中学聖日記」、コンテンポラリーバレエ公演「MANON」、ミラノ万博・日本館展示作品などがあり、米Amazon オリジナル映画「ジョナス・ブラザーズ 復活への旅」や、ヴェネチア映画祭・金獅子賞を受賞したフランス人監督オドレイ・ディワンのデビュー作「Mais vous êtes fous(Losing It)」、東宝映画「思い、思われ、ふり、ふられ」でも楽曲が使用されている。
近年は、国際的なブランドとのコラボレーションが多く、是枝裕和監督が手掛けた SK-II STUDIO のドキュメンタリー「The Center Lane(池江璃花子)」の音楽や、アパレルブランド TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. コレクション・ランウェイの音楽、LA MER BLUE HEART、LAND ROVER、L’OCCITANE への楽曲提供、米アーティスト Devendra Banhart との共作など、特定の枠に収まらない独自の活動を展開。
また、Spotify が発表する「海外で最も再生された日本人アーティスト/楽曲 Top10」に2017年、2018年連続でランクインしたほか、米国メディア「Pitchfork」、豪州新聞紙「THE AGE」、フランス公共放送「FIP」、カナダ公共放送「Ici Musique」にてその才能を賞賛されるなど、国内外から注目される作曲家。
2022年より名門デッカ・レコードと契約を結び、EP『Pause (almost equal to) Play』をワールドリリース、ジョン・レジェンドの新作『レジェンド アクトⅠ&Ⅱ』収録の「ジ・アザー・ワンズ feat. ラプソディ」でも自身の楽曲がサンプリング使用されるなど、世界を舞台とした活躍を続けている。
2023年6月30日に、待望となるメジャーデビューアルバム『SEASONS』をデッカ・レコードよりワールドリリース。

「飽きることの無い彼の旋律は果てしなく、他の音楽家と一線を画するものだ」-ピッチフォーク
「ファンタスティックだ」―ジャイルス・ピーターソン
「ピースフルで喚起的な音楽」-ファクト・マガジン